GVBインプレッサとKZ1000とCBRと。

インプレッサGVBとCBR250RRとKZ1000の整備記録と備忘録ですが良くも悪くも誰かの参考にでもなれば幸いです。※Amazonのアソシエイトとして、当メディアは適格販売により収入を得ています。

YAMAHA SR400 シフトチェンジができない状態の修理をした話

またしても自分のバイクではないのですが、頼まれてバイクの修理をする機会がありまして。

もちろんバイクの整備は本職では無いですし、何かあったりすると嫌なので他人のバイクを整備するのはあまり積極的にやりたくは無いのですが、「おもちゃにしても良い」と言って頂けましたので、自分の経験値にさせてもらおうと思って取り組んでみました。

 

ちなみに今回の作業はめずらしく動画にもしてみましたので、もしよければそちらもぜひご覧ください。


www.youtube.com

 

車両はYAMAHAのSR400です。

ほとんどノーマル(に見える)で、あまり積極的にメンテナンスされてなさそうな感じです。数年ぶりにエンジンをかけたと言っていたような・・。

とはいえエンジンはキック数発ですんなりかかったようで、ちょっと整備すれば普通に乗れそうなコンディションに見えます。

 

■故障内容■

症状としてはシフトチェンジができないというもので、シフトペダルが上にも下にも動きません。

ギヤは入っていない状態のようで、クラッチを繋いだ状態でもリアタイヤはクルクル回ります。ただ、その状態なのにニュートラルランプは点いていません。

 

エンジンをかけた状態で、シフトアップしようとしても全く微動だにせず。逆にシフトダウンしようとするとダダダダダと干渉するような異音がします。

 

しかも走行中にこうなった!という事で、シフトフォーク各ギヤが異常な感じが濃厚です。ミッション内部の確認をするという事はエンジンを降ろして腰下を分解することになるのかとこの時点では超憂鬱です。

 

なんにせよ外から眺めていても原因は分かりませんので、順番に分解していこうかと思います。

 

エンジンを開けますので、まずはエンジンオイルを抜きます。

SRはエンジン下部とフレームの2か所にドレンボルトがあるので順番に抜いていきます。

↓エンジン下部

↓フレーム前部

フレームからオイルを抜くときは画像のようにテープを貼ってから抜くと、フレームの下の方までつたっていってしまうのを防げます。(作業前に先人の知恵を拝見して勉強しました。)

 

オイルが抜けたらエンジン右側面にあるオイルフィルターカバーを取り外してフィルターも外します。

ボルト3本で留まっていますが、下のボルトを緩めるとオイルが流れてきますので注意です。

 

続いて右側面のエンジンカバーを外すのに邪魔なものを外します。

・キックペダル取り外し

ボルトを1本抜けば取れます。

 

・右ステップ取り外し

ナットを2個外せば取れます。ワッシャーあるので落とさないように注意。

 

・リアブレーキペダル取り外し

ボルトを1本抜けば取れます。

 

マフラーは付いたままでも問題なさそうでしたので、エンジンカバーのボルトを全て外してカバーを取り外します。

↑画像の赤い矢印で示した2か所は『位置決め用のカラー』が入っていてボルトの種類が違いますので注意です。(混ざってしまっても分かると思うので別に注意ってほどでもないかもです。)

 

全てのボルトを抜いたら、パカッと開ければ外れます。

※若干固着していたのでプラハンマーで少しコンコンと叩きました。

 

ここを開けると第一容疑者が見えますので、クラッチの左下あたりをのぞき込んでチェックします。

位置的には車体左側にあるシフトペダルのちょうど反対側。シフトペダルの動きをシフトドラムにつたえるギヤ的な部品です。(この部品なんて言うんですかね?)

↑この時点でもう何か変なのでですが、クラッチが邪魔でよく見えませんし、触れもしないので仕方ないのでクラッチも外します。

 

クラッチはスプリング+ボルト6本を外せば外れます。

ボルトを抜いたら押さえの部分とプッシュロッド(?)を抜きます。

この真ん中の穴のさらに奥に反対側に繋がるシャフトが入っていて、磁石などで誘引したり車体を傾けたりして抜くらしいのですが、今回の作業的に抜く必要もないですし、摩耗状況をチェックするつもりもないので入れっぱなしにします。

 

クラッチ板は嵌っているだけなのでそのまま抜きます。

本来なら、せっかく外したのでクラッチ板もスプリングも、厚さ・長さを計測して、摩耗状況やへたり具合を判断するところですが、今回はあくまで人のバイク!

故障診断を頼んだら

『〇万円の部品を交換した方が良いですよ!』ドヤッ

って言われても面倒だと思いますので、今回は知らぬが仏で計測すらしません。

 

次に真ん中のボルトを緩めてハウジングを取り外します。

このボルトはクルクル回るので、回り止めの工具を使用して緩める必要があります。が、横着してインパクトでブルンッと緩めました。

※でもインパクトがあれば良いというわけでもないです。なにせ、組み立てるときには締めないといけませんからね。さすがにインパクトで締めるわけにもいかないですし。

 

で、クラッチハウジングを外すとこうなりまして

やっとこさ問題の箇所がよく見えます。

↑画像の左側の部品がシフトペダルに繋がっていまして、ペダルを上下に動かすと連動して動いて画像右側の部品を動かします。右側の部品が動くと奥でつながっているひっかける爪のような形の部分が動いてシフトドラムを回す。という構造のようで特に破損している様子もないのですが、位置がおかしいです。

下がった状態で止まっています。

シフトダウンしてペダルを下に踏んだ状態の位置、と言いますか・・

 

ペダルを操作していない状態であれば正しい位置は↓ここのハズです。

 

ペダルを踏んだ状態で止まってしまっていますが、元の位置に戻すためのリターンスプリングは作用する位置にあるようですし、スプリングが機能していないだけなら上にも下にも動かない訳ないので、つまり踏み込んだ位置で何かがどこかで噛みこんでしまっている。しかもギヤが入っていないのでギヤ抜けの位置で。ということになります。

幻の0速みたいな?知らんけど。

 

このあたりで本格的に嫌な予感を感じつつ更に分解を進めます。

 

まず右側の部品(名前何って言うんでしょ?)は、クリップで留まっていますのでマイナスドライバーで外します。外れた瞬間飛んでいくので注意。隙間にでも入ったら超めんどくさいです。

 

左側の部品はシフトペダル側にクリップがありますので、まずはシフトペダルを外します。

シフトペダルもボルト1本外せば取り外せます。

はめるときに角度が分からなくなるので外す前にマジックなどで合いマークしておくと良いかもしれません。

ペダルを外して、ゴムのカバーみたいなのを抜くと、奥の方にクリップがあるのでマイナスドライバーを突っ込んでそれを外します。

クリップが外せたらもう抜けますので、また車体右側に戻り引き抜きます。

エンジンを降ろさずに触れるのはここまでなので、祈るような気持ちでシフトドラムを手で(木の棒で)回してみます。

すると、カチャン、カチャンと軽く回るではありませんか!

そりゃドッグの嚙み合いでギヤが入らない箇所もありますけど、それは正常な事!

カチャンカチャンと一番下まで下げてから、少しだけカチャリと上にあげて、キーを捻ると、

ニュートラルランプ点灯!歓喜

シフトチェンジできてる!

シフトドラム以降シフトフォークやミッションは正常(っぽい)!

エンジンを降ろさなくて済みそう!(大事)

 

しかしそうなると、先ほど外した部品にやはり異常があるという事なのかと思いよくチェックして見ても、特に破損していたり、著しく摩耗しているような様子はありません。

 

仕方が無いので、組み戻してみて動作を確認してみますと、

普通に動作するではありませんか!

シフトペダルを戻してガチャガチャガチャとシフトチェンジしても、どこも噛みこむ様子もなく普通に動きます。

 

これはこれで困りました。

原因はよくわからないけれど、分解して組み立てたら直りました。』のパターンです。

でも実際、この時点では正常に動作していますし、再現性が無いのでこれ以上検証しようがありません。

もしかすると左右の部品が噛み合っている部分の摩耗などで、強くペダルを操作すると行き過ぎてしまって噛みこんでしまったりするのかな~と思ったり、でもストッパーの部分は摩耗している様子もないし行き過ぎてしまうなんてことあるのかな~と思ったり。

これが自分のバイクで長く乗るつもりだったりするなら予防整備も兼ねて、新品に変えたりするのも選択肢ですが、今回は人のバイクですし、しかもそんなにモチベーションもなさそうなので(久しぶりにエンジンかけたって言ってたぐらいですし)、

ひとまず(少なくとも今の時点では)問題なく作動するようになりました。

という事で作業を完了したいと思います。

※しばらくは近場を走って様子を見てもらいます。

 

と、いう事で組み立てます。

組み立ては基本的に逆の手順でOKですが、

クラッチハウジングのナットを締めるときは回り止めの工具が必要になります。

画像に写っているのはDAYTONAのプーリーホルダーHONDA用(HONDA用!!)という商品で4千円弱ぐらいの物です。(こういう普段あまり出番のない工具が活躍すると嬉しい!)

 

 

 

あとクラッチを締め付けるときはトルクレンチが必須です。

規定トルクで締めることはもちろん、6本とも同じ力で締めることが重要だと思います。

あとカバー側もエンジン側も合わせ面は、古いガスケットをスクレーパーでキレイに剥がして、オイルストーンで磨きました。

エンジンオイルが漏れたり、滲んだりすると困りますのでしっかり念入りにキレイにします。

 

もちろんガスケットも新品です。

オイルフィルターとそのカバーのOリングも、あとフィルター下部の小さいOリングも新品にします。

外したものを全て付け戻したら最後にエンジンオイルを入れて作業完了です。

SRってフレームにオイル入れるんですよね。

何かでフィルター変えたら2.1リットルと見た気がするのですが、2リットル入れたらアッパーとロアの間ぐらいになったので、そこでやめておきました。

フィルターまで変えましたので、エンジン始動前に何回かキーがOFFのまま空キックしてオイルポンプを回してオイルを循環させてから(気休め?)エンジン始動。

 

試しに少し走らせてみましたが、問題なくシフトチェンジできました。

 

ということで、一応走れるようにはなったけど、スッキリはしないという結果に。

なんとなくシフトチェンジも抵抗を感じるような気もするようなしないような。シフトフォークなんかも摩耗しているのはしていると思いますし、今回の箇所以外にもメンテが必要と思われる部分が結構あるバイクでしたので、もし継続的に乗っていくなら順次メンテをしていくと良いんじゃないかなぁと心の中だけでつぶやいて、持ち主のもとへお返ししました。

 

私としても、あまり普段触れることのない車種でしたので、経験値が積みあがったような気がして有意義な作業でした。

 

また再発するようなら改めて検証して、この場でも報告したいと思います。